世界の最先端を行く都市、そしてメジャーマラソンの中でも最もタフなコースとして知られるニューヨークシティマラソン。
今回で37回目のフルマラソン&10回目の海外レースとなりました。
今年7度目の自己ベスト更新も狙いたい気持ちはありつつ、コース的に現実的ではない…
それでも、せっかくのメジャーレースで、何かを残して帰りたい、そんな思いで臨みました。
9月のベルリンマラソンを終えた後、1週間ほど軽めの調整を経て、ニューヨークに向けて動き出しました。ベルリンでは2時間11分26秒の自己ベスト。タイムも内容も、これまでの積み重ねがしっかりと形になったレースでしたが、満足よりも「まだ上がある」という感覚の方が強くありました。
記録自体はタイミングが合えば出るもの。ここからは、さらなるタイム更新というよりも、様々なレースを経験しながらこのレベルで安定させるという考えのもと、練習でも強度を上げるよりも実際のレース中の変化を意識したメニューを重視していました。
その他の日は、朝晩60-70分ジョグが多かったです。気温が下がってきたことでトレック練習の強度が上がったためか、思ったより疲労が溜まることも多く、たまに朝練を休むこともありました。
全体的に10月は8月、9月に比べると、ほんの少しですが強度が上がり、その分量が減っていく形となりました。
実はレース週の10月28日(火)、16000mの練習直後から脚の親指に違和感を感じていました。
翌朝も気になって朝練をスキップする事態に。突き指のような感覚で、何が起こったのか自分でも分からなかったのですが、翌日の夕方からは走れるくらいには回復し、大きな支障はありませんでした。ニューヨークに行ってからは、レース中も含めて全く痛みを感じなかったので、本当に良かったです。
10月30日(木)
11:30羽田発(ANA)で13時間にも及ぶフライト。時差も13時間で、出発した時刻と同じくらいの時刻に到着する形となります。
海外へ行くときは、なぜか現地についてから1日ほどお腹を壊すことが多いので、衛生面には細心の注意を払っています。歯磨きの水すら水道水を避けるほど。機内食の生ものも少し不安ですが、日本の航空会社は衛生面に配慮してくれているので、なるべく日本の航空会社を利用するようにしています。
唯一くつろげるランチタイムも食べ慣れた物が出てくると安心です。

気流の関係で予定より早く到着したのは想定外でした。
現地に到着してからはスタッフの方がエリート選手用のホテルまで送迎してくれるというVIP待遇。ただ、調子に乗って車の中で片手間で仕事をしていたら車酔いしてしまい、吐きそうになりながらホテルに到着。次回以降は気をつけたいと思います笑
想定より早く到着してしまった影響で、チェックインまで時間がありました。慣れてくれば、夕方くらいに到着するフライトを取った方が良さそうに思いました。

招待選手のホテルは、ヒルトン・ミッドタウン。ヒルトンはどの国でもハズレがないので安心できます。
エントランスもマラソン仕様。こんな豪華なところに泊まらせてもらえるなんて光栄です!

さすがニューヨークというか、エレベーターの高速化プロジェクトのようなものを実施していました。
行き先を先に選択する仕組みでしたが、内心「いや、そうじゃないだろ」とは思いました笑。
個人的には、重量を計測して満員に近い場合、中から出る人がいない階は全てスルーする仕組みを入れるのが最優先で、それだけでも十分改善されるように思います。滞在中にエレベーター待ちで過ごした時間はかなり長く、その中でも満員時の無駄な停止が多くあったように思います。こういうロジックを社会実装する仕事はとても好きなので、いつかこういう仕事もしてみたいなと感じました。

18:15まで昼寝。そこから40分ほど、軽くホテル内のジムでランニング。ジムの設備は充実していて良かったです。
普段の遠征先のホテルでも、ホテルの中やその周辺にランニングジムがあるかどうかという要素も考慮に入れているのでとても助かりました。
走れば走るほど調子が上がる感覚がありましたが、最低限体がほぐれたタイミングで中止。ボストンやベルリンの時に比べると、到着当日の体調はかなり良かったように思います。
10月31日(金)
6:30 朝練(まだ暗いのでジムで実施)
思ったより暗く、7:00を過ぎるくらいから少しずつ明るくなってきましたが、慣れていない2日目からあまり迂闊に外へ出たくなかったので、室内で実施しました。

11:00 アンチドーピングセミナー
身近なものの中に禁止物質が含まれており、1/3が禁止物質、半分以上が成分表示なしというのは驚きでした。
特に海外へ行った時など、慣れないものは使わないに限る。こういった教育も、これから上のレベルを目指すにあたってしっかり身につけておく責任があるので、より一層気をつけたいと思います。
17:00 1時間ほどジョグ
そろそろ外を走りたい頃でしたが、日中はそれなりに観光客で人が多そうだったので、室内で実施しました。この日は空き時間が多く、合間に仕事を片付けたりする余裕もあって、比較的ゆったり過ごすことができました。
11月1日(土) レース前日
この日は少し忙しく、上記のようなスケジュールでした。テクニカルミーティングまでにはある程度準備を済ませて、夜になって慌てないようにしました。
ミーティングの少し前に、相部屋のMatthewさんが部屋に到着。まさか同じソフトウェアエンジニアということもあり、とても親しみを持てました。3000m7分台というめちゃめちゃすごい記録の持ち主。しかもニューヨークでエンジニアとして働いており、仕事も競技も世界の一流である彼からはとても刺激を受けました。

テクニカルミーティングの後、彼と彼の友人たちとパスタディナー。レース前にも色々と交流でき、さらにやる気を高めるような刺激的な時間でした。
11月2日(日) レース当日
前日になって知ったのですが、なんと、レース当日にサマータイムが終了し、時間が1時間戻ることに。つまり、予定していたよりも1時間余裕が生まれるということ。朝早いスケジュールだったので、これは本当に助かりました。夜はぐっすり眠れて、十分に疲れを取ることができたように思います。
一方、スタートが9:05なのに、5時過ぎからスケジュールが動き始めるというかなり過酷なスケジュール。とにかく移動時間が本当に長い。。。いきなりスタート地点へ行くのではなく、一旦アップ会場に行ってから、スタート地点へ移動する形となります。
このブログを見てくださっている方ならなんとなく察しがつくかもしれませんが、アップでジョグをしない私にとっては最悪のスケジュールです。アップ会場へ到着してからは本当にすることがなく、最後の方に体ほぐしを始めるまでは横たわってやり過ごすしかありませんでした。

そこからスタート地点へ移動するバスで、とんでもない出来事が起こりました。なんと、あのキプチョゲ選手が隣に座ってくださったのです!なんと写真まで撮ってくださいました。まさかこんなところで……一生大切にします!
スタート地点に着いてからは結構慌ただしく、すぐに持ち物を預ける必要があったので、その場でレーシングシューズに履き替えて、そのままスタート地点へ。ここで100mほど軽く流しをして、ウォーミングアップ完了です。

ニューヨークは、おそらくメジャーマラソンの中でも最も難しいコース。特にNYCのエリート部門は少数精鋭で、申し込み当時の2:13のタイムでは最初から完全に置いていかれる不安も正直ありましたが、緊張なんて今更。むしろ吹っ切れ感の方が強かったです。序盤から、コースのことは考えずに体の調子のままに走った結果、まさかのほとんど誰もついて来ず、最初の数キロはほぼ独走状態でした。

4kmより少し前くらいの地点で、キプチョゲ選手を中心とした集団に追いつかれつつも、先頭でレースを進めました。明らかに周りはレベルが違うはずなのに、なぜかそこで走れているという不思議な感覚。結果的に、24kmくらいまで先頭で走ることができました。
25km手前の上り坂で一気にペースアップ。そこからは世界レベルの走りに圧倒されましたが、自分は自分と割り切って、最大限できることを尽くしました。
その後も、厳しい上り坂を何度も迎えつつも、大きく崩れることはなく終盤へ。なんと、40km手前くらいでキプチョゲ選手が……一度追いついて、しばらくの間並走することができました。
最後は脚が限界でスピードを緩めざるを得ず、キプチョゲ選手に少し離されてしまいましたが、最も尊敬するランナーの最後のエリートレースに、最も近い位置でゴールできるとは……
ここに来れて本当に良かったと思いました。
結果は2時間14分51秒で18位。
入賞ラインももう少しで見えてきそうな位置まで来ることができました。
このコースでは、日本人で2時間10分を切った人はおらず、他のランナーも大体プラス4分以上はかかっていることを考えると、タイム的にも悪くはないのかなと思います。

レース後は近場を観光しようと思いましたが、体調を考えて断念し、ディナーパーティを優先しました。
旅では人とのつながりを最優先にしたいという方針です。様々な国のランナーの方や大会関係者の方と交流でき、非常に有意義な時間でした。
今回はバイキング形式だったので、最後までちゃんといました。美味しいものをたくさん食べられて大満足。ここで満腹になるかどうかは旅全体を通して悔いが残るかどうかにも繋がるため、この時間もしっかり満喫できて大満足です。
ニューヨークを走り切って感じたのは、「速さ」だけでは測れない充実感があるということでした。
25kmまで先頭集団で走れたこと、そしてキプチョゲ選手の最後のエリートレースで並走できたこと。最も尊敬するランナーと最も近い位置でゴールできたことは、ランニング人生において大きな財産です。
また、この大舞台で自分の走りを出せたという確かな実感も得ることができました。最近では海外の選手たちと競い合うのも慣れてきて、全然臆することなく自然体で走れるようになっていると感じます。これからも、こうした経験を積み重ねて、身体的にも精神的にももっともっと成長していきたいと思います。
これからの方向性としては、無理に「もう一段」を狙うのではなく、「土台を厚くする」をテーマにしていく予定です。おそらく、もうすでに2時間10分を切る力はあるので、あとはタイミングに任せて、様々なレースで、様々なレースパターンを経験していきたいと考えています。
最後に、支えてくれたすべての人へ。練習仲間、スタッフの皆さん、現地やオンラインで応援してくれた方々、そしてともに走った選手たち。本当にありがとうございました。
ニューヨークも、もうすでにまた走りたいと思っているので、またいつか戻ってきます!次は本当に最後まで入賞争いできるくらいのレベルになって帰ってきます!
これから春頃までは、日本がマラソンシーズンになるので、国内レースが中心になります。
次回は福岡国際マラソン!国内有数の高速レースで知られる大会ですが、しっかり戦っていきたいと思います!
並行して、いろいろと進捗がありました!
まず、MUSVIさんと正式にスポンサー契約を結ばせていただくことになりました!
https://musvi.jp/2025/11/07/5077/
MUSVIさんは、普段からソフト開発でお世話になっている企業様なのですが、こうした形でもサポートいただけることになり、大変光栄です!
これからも、エンジニアとしてもランナーとしても、結果でしっかりと恩返しできるよう、これからも全力で走り続けていきます。
また、TABIOさんからも2回目のインタビュー動画を公開していただきました。こちらも是非ご覧ください!
昔からTABIOさんのソックスは愛用していて、普段のトレーニングからレース本番まであらゆる場面で使ってきたので、こうしたご縁があって本当に嬉しいです!
これからも、支えてくださる皆様への感謝を忘れず、競技に取り組んでいきたいと思います!
近々ダイフクプロジェクトが始まるのでそちらも是非お楽しみに!