フルマラソン2時間15分切りを達成するまでの道を振り返って

投稿日:2025年03月31日

10年前、初めてのマラソンを走ったときのタイムは2時間48分。正直なところ、「もう二度と走りたくない」と思うほど辛い経験だったのを、今でも鮮明に覚えています。

それでも、あの時からコツコツと積み重ね、2時間40分、30分、そして20分と、少しずつ記録を縮めながら、気づけば約10年。試行錯誤を繰り返しながら、なんだかんだでここまで来てしまいました。

最近は、大学時代につけていた練習日誌を見返し、当時の自分と現在を比較することがあります。トレーニングへの考え方や取り組み方は、特にここ数年で大きく変わってきたと感じています。

年度末ということで、ちょうど良いタイミング。今回の振り返りを通じて、今後の成長のための糧にするとともに、このブログを読んでくださっているランナーの皆さんにとっても、ヒントや励ましになれば幸いです。

 

トレーニングメソッドに絶対はない

 

まず大前提としてお伝えしたいのは、トレーニング方法において、万人に当てはまる「絶対的な最適解」は存在しないということです。

人それぞれ、置かれている環境も違えば、性格やモチベーションの源も異なります。

たとえ強豪チームで、名監督のもとでトレーニングを積んだとしても、全員が記録を伸ばせるわけではありません。中には、そのやり方とうまく噛み合わず、成果に繋がらない人も必ずいます。それはつまり、「全ての人に当てはまる完璧なトレーニングメソッド」など存在しないということです。

さらに言えば、自分自身でさえ、環境や生活リズムが変われば、これまでうまくいっていた方法が通用しなくなることもあります。過去の成功体験に固執せず、今の自分にとっての最適解を探し続ける姿勢が大切です。

ですので、これからお伝えする内容も含めて、「これは自分に合いそうだ」と思えるものはどんどん取り入れ、逆に「どうもしっくりこない」と感じるものは、試行錯誤したうえで、思い切って手放す勇気を持ってください。

 

レースに出る頻度の変化

まず、自身の取り組みの中で、ここ数年で最も大きく変わったものは、レースに出る頻度だと思います。

数年前までは、数ヶ月先の目標レースに向けてトレーニング計画を立て、じっくりと仕上げていくスタイルを取っていましたが、最近では、2〜3週間に一度のペースでレースに参加するようになりました。

この変化の背景にあるのは、「レース感覚はレースでしか鍛えられない」と実感したことです。

駅伝の強豪校や実業団チームのような環境に身を置いている選手であれば、日々の練習の中で仲間と競い合い、実戦的な感覚を自然と身につけることができます。しかし、一般的な市民ランナーにとっては、そういった機会がなかなか得られません。

また、実際にレースに出ることでしか学べないことがあります。たとえば、ギリギリ持つペース配分の感覚、他選手との駆け引き、苦しい場面でのメンタルなどは、どれもトレーニングだけでは身につけるのが難しく、実戦経験を積むことが最も効果的だと感じています。

マラソン練習においては、「30キロ走」が定番ですが、それがうまく走れたからといって、必ずしもフルマラソンで結果が出るという感覚は自分には持てませんでした。結局のところ、これまで何度もフルマラソンを走る中で、フルマラソンに慣れるには、実際にフルマラソンを走るしかないということを強く実感してきました。

また、練習の質に関しても、特に個人で練習しているランナーにとっては、安全なコースの確保や給水などの課題も、レースに参加することで解決できます。また、レース直前にどのような練習や調整が有効かを、短いスパンで試して確認することができ、うまくいかなかった場合でも、すぐに軌道修正できるメリットがあります。

このように、トレーニングと並行して定期的にレースに出ることは、今の自分にとって非常に大きな意味を持っていると感じています。

 

休養

これも、レースに出る頻度が増えたことの副産物ですが、休養のタイミングにも良い変化が生まれました。

定期的にレースを取り入れるようになったことで、レース前後には自然と強度を落とす日ができるようになり、トレーニングにメリハリをつけやすくなったと実感しています。
以前のように、数ヶ月先の大きな大会だけを目標にしていた頃は、どうしても休養のタイミングを見つけにくく、気づけばダラダラと練習を続けてしまうことも多くありました。

現在では、レース翌日は必ず完全休養日と決めており、それが海外レースの場合は様々な負担を考慮して3日以上の休養を取ることもあります。休養のタイミングが明確になったことで、以前より、心身ともにしっかりとリカバリーすることを大切にするようになりました。

休むのは少し罪悪感が伴いがちですが、定期的にレースに出ることで、自分の現状を確認する機会が増えることで、気持ちにも余裕が生まれ、「今は休んでも大丈夫だ」と思える安心感に繋がっていると感じます。

このように、レースに出る頻度を増やすことは一見リスクが高まるように思えるかもしれませんが、実際には怪我のリスクを下げ、身体をいたわる機会を増やす効果があると感じています。

 

ジョグ

 

普段のジョグは基本的に距離で管理しており、毎朝・毎晩それぞれ15km前後を走ることが日課になっています。

ただし、疲労が強く残っている日や状態が良くない日には、距離ではなく時間を基準にジョグを行うことが多いです。その日の疲労具合に応じてペースを調整することで、走行距離を無理のない範囲に抑えることができるからです。

一方で、調子が良いときは、つい走りすぎてしまうこともあるため、通常のコンディションの場合は距離で管理することで、過度な走り込みを防ぐようにしています。仮にペースが上がってしまったとしても、距離が決まっていれば短時間で終えることができ、走り過ぎ防ぐことに繋がります。

また、走る路面にも気を配っていて、なるべく芝生や直線道路など、足に優しいコースを選ぶようにしています。特に疲れを強く感じる日は、すぐに中断できるような周回コースに移動してから走るなど、体の状態に応じた配慮も欠かさないようにしています。

 

体重

体重はどうしても気になるし、増えてしまうと罪悪感を抱きがちです。

自分と同じく身長が177cmほどのエリート選手の平均体重を見てみると、おおよそ60kg前後が目安かなと思います。

私自身、過去数年間で、58kgから最大67kgまで体重を変動させながら走りを試してきましたが、意外にもパフォーマンスにはそれほど大きな差が出ませんでした。

特に近年は、カーボンシューズの進化もあり、以前より体重の影響が小さくなってきていると感じています。むしろ、少し重みがあった方がシューズの反発を活かせる場面もあるくらいです。

一番避けるべきなのは、体重を気にしすぎて過度な栄養制限をしてしまうこと。貧血やエネルギー不足といった栄養失調状態では、当然ながら練習も積めませんし、長期的にも身体がもちません。多くのエリート選手からも話を聞いてきましたが、食べられる人はやはり強い。長く競技を続けるには、「しっかり食べること」こそが基本です。

もちろん、食べるものの質やバランスを意識することは大切ですが、過度な制限でストレスを溜め込んでしまうと本末転倒。その分、食べた分しっかり走ってエネルギーを使っていくという考え方の方がずっと健全だと思います。

「食べることは、走るための準備」と考えるようになってからは、体重や食事に対して必要以上にナーバスにならず、自然体で競技に向き合えるようになりました。

 

優先度を明確にする

時間は全ての人に平等であり、有限です。

もし無限に時間があるのなら、取り入れるべきトレーニングやケアはたくさんあります。しかし、現実には限られた時間の中でやりくりするしかありません。

だからこそ、日々のトレーニングにおいても、何を優先すべきか」を明確にする必要があります。

たとえば補強トレーニングを取り入れるにしても、その前にメインの練習量や睡眠時間が十分に確保されていないのであれば、本末転倒。優先順位を見誤ることで、効果を得られないどころか、逆にパフォーマンスを落としてしまうこともあります。

自身の中での優先順位は、以下のようなイメージです。

 

1.週2回の高強度トレーニング(インターバルやビルドアップなど)

2.十分な睡眠

3.マッサージやストレッチなどのケア

4.距離走またはペース走

5.ロングジョグ

6.補強トレーニング(時間と体力に余裕があれば)

 

このように、本当に大切なものから優先的に取り組むことで、トレーニング全体がうまく回るようになりました。

最近は1-5までを取り入れて、6の補強取り入れておらず、その分をロングジョグに回すようにしています。実際に、フルマラソンのタイム更新に繋がっていると感じたのでこの優先度は自分の中では今後も変わってこないだろうと思います。

このように、優先度を決めることは、時間的に余裕のある時、ない時の取捨選択の際に、ブレない指針を作ることにつながります。

 

疲労回復

これも、ある意味では優先順位の話になりますが、休養を考える上で最も重要なのは、やはり「睡眠の確保」です。

睡眠時間が十分に取れていない状態で、サプリメントや治療器具に頼るのは本末転倒。まずは基本である睡眠を十分に確保することが、何よりも回復への近道だと感じています。

とはいえ、自分自身もまだまだ意志が弱く、つい睡眠時間を削ってしまったり、寝不足や寝坊で反省することもしばしば。。。

特に最近は、トレーニングの距離や強度が増したことで、日常的な疲労感が以前よりも高まっていて、今まで以上に気を配るべきだなと痛感しています。

まずは、質の高い睡眠を十分な量確保すること。そのうえで、必要に応じて疲労回復系のサプリメントや、治療器などの補助的な対策を検討していくべきだと考えています。

その上で、デスクワークによる背中の張りが原因で睡眠の質が著しく低下することがあり、それを防ぐためにも指圧マッサージは優先的に取り入れています。

実際、指圧の効果は論文などでも高く評価されているようで、心身ともにリセットされる感覚があり、非常に助けられています。

また銭湯は、レース後の休養日などで体を動かせない日などに、ある意味運動がてら、汗を流したいときに活用しています。

 

楽しみを作る重要性

これは真面目な人に多いと思いますが、「我慢すればするだけ、苦しめば苦しむだけ、ご褒美が待っている」的な考え方をしてしまう人は多いと思いますが、長期間トレーニングを続けるには、何か楽しみがないと続きません。

「ランニング」に詰まっているのは、「ランニング」だけではないんです。人や場所との出会い、グルメ、その他のモチベーションと共に「ランニング」を位置付けることで、見える世界が変わってくるのではないかと思います。

私の場合は、せっかくこれだけ走ってカロリー消費しているのだから、食べることももっと楽しめるのではないか、という思いから、最近は各地でのグルメを楽しみにレースに臨んでいます。

今後も、グルメ系の投稿は増やしていこうと思いますし、SNS上で、グルメ系の投稿を見たら、「1億いいね」くらいの気持ちを込めて全力で「いいねボタン」を押したいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

大体距離は決めているとはいえ、普段のジョグでも、あと残りどれだけ走ろうか迷った時の目安に、「あとどれだけ走れば、もっとご飯が美味しく食べれるだろうか」という視点を加えて、距離を調整することもあり、自然と距離が伸びる方向に働き、楽しく練習量を伸ばせているように思います。

 

自己流と固定観念とのバランス

例えば、レース展開に関して、以前は、「後半で失速したくない」という気持ちから、ネガティブスプリット(後半速く走る展開)を基本とし、それがうまくはまっていた時期もありました。

しかし、2時間20分を切るようになった頃から、そのアプローチに限界を感じるようになりました。そこで、1年前くらいからは序盤からある程度速いペースで入るレース展開を試し始め、ようやくその流れにも慣れてきました。

先日、ついに2時間15分を切ったレースでは、後半のラップタイムを振り返ってみても、「後半もう少し落とさなければもっと先へいけそうだ」という手応えを感じることができました。これまでの自分の「常識」を破ったことで、新しい可能性が見えてきた気がします。

このように、自己流のメソッドを確立することは大切ですが、同時に「自分はこうでなければいけない」という固定観念に縛られすぎない柔軟さも必要です。
そのバランスを取ることは簡単ではありませんが、挑戦を通じて、自分の幅を広げていくことが、今後さらに成長していくための鍵になると感じています。

 

練習の目的を明確にする

基本的に、我々最前線で競技をしているランナーは結果につなげてなんぼの世界です。どれだけ練習を積み重ねても、それが結果に繋がらなければ、ただの自己満足で終わってしまいます。

とはいえ、わかってはいても、それが難しいのも正直なところです。
レースで自信を持って走るためには、ある程度の練習が必要ですし、「いい練習をしたい」「強くなりたい」という気持ちが強いほど、つい練習でも頑張りすぎてしまうこともあります。

大切なのは、ただ頑張るだけではなく、その練習がレースにどう繋がるのかという「目的意識」を持つこと。
「この練習はどんな場面で活かされるのか?」「今の自分に本当に必要な負荷なのか?」
そうした問いを持ち続けながら、日々のトレーニングに取り組む姿勢が求められます。

最近はレースに出る機会が多いこともあり、そのレースで感じた感覚をいかに日々の練習に落とし込めるかを意識するようになりました。

実戦の感覚を練習の中で再現できるようになることで、練習とレースの距離が縮まり、結果にも直結しやすくなると感じています。

練習は目的を持ってこそ意味があり、その積み重ねが自信となって、レースで力を発揮できる準備になる。

そう思いながら、日々の練習に向き合っています。

普段実施しているいるような、インターバルやペース走で中盤に一気にピークを持っていく、ような練習も、そのような考えからきているものです。

 

トレッドミルの活用

冬季や悪天候時のトレーニング手段として、これまでもトレッドミルは活用してきましたが、最近では「天気の良い日でも積極的に取り入れるべきなのでは?」と感じるほど、意外に効果的な練習だと実感しています。

ロードでは、路面の凹凸、曲がり角、交通の状況など、どうしてもフォーム以外に気を取られる要素が多くなりがちです。

その点、トレッドミル上では「走ること」だけに集中できる環境なので、特に腕振り・接地・重心の位置といった基本動作を細かく意識するには最適です。

この感覚が、実際のレースでもしっかりと活かされている手応えがありました。

とはいえ、まだ試行錯誤の段階であり、決定的な結論を出すには時期尚早かもしれません。今後も引き続き取り入れながら、その効果を検証していきたいと思っています。

 

シューズの使い分け

シューズにもこだわりがあります。

芝生でナイキフリーのような裸足感覚のシューズを使うことで、足先の筋肉を使うことで血流を促進したり、

路面の硬い場所をジョグする時は、カーボン入りの厚底シューズ、

本当に疲れている時は、芝生で薄底のストリークフライ、などその時の状態や路面に合わせてシューズを使い分けることで練習効果、疲労回復効果を最大限に高められると感じています。

このように、さまざまなシューズを目的別に使い分け、少しでも良い練習をこなせるようにしています。

 

効率化への誤解

多くの人が効率的な練習を求めますが、本当の効率化は徹底的にあらゆる方法で、圧倒的な量をこなした時にしか見えてきません。

かつて、誤解して距離だけを踏むことだけに専念してスランプに陥った時期がありました。あの時は、月間850kmくらい、嫌ほど走っていましたが、そこまでして失敗したからこそ、見えてきたものがある気がしています。

どの練習がどれほど個人に効果を及ぼすかも、人それぞれ。甘い言葉には乗らずに、着実に自身のメソッドを確立していく姿勢が重要です。

 

誰もが迎えるピーク:「足し算」から「引き算」へ

一定のレベルに到達すると、それまでのように距離や強度を「足す」ことでの急激な成長は難しくなってきます。

むしろ、ある要素をそれ以上に「足す」ことで、他の要素に影響を及ぼして、かえって調子を崩してしまうこともあります。

最近は、自分自身の中でトレーニング量や時間など「ここがひとつの到達点かもしれない」と感じる瞬間が増えてきました。

それは、期待が高まる一方で、少しだけ寂しさも伴う、不思議な感覚です。

だからこそ今は、「何を足すか」ではなく「何を引くか」という視点も大切にしています。

トレーニングのバランスを見直し、本当に必要なことだけを残していく。無駄を削ぎ落とし、より洗練されたスタイルを目指す段階に入ったのかもしれません。

この変化する心境もすべて受け止めながら、これからも自分なりに精一杯、あがき続けたいと思います。

 

終わりのない世界

どれだけ記録を伸ばしてもまた新しいステージで、強い選手たちが待っているこの世界。

キリがないといればそうなのですが、だからこそマラソンに飽きずにここまで来られているのではないかなと思います。

今後も日々現れるライバルたちに感謝をしながら、さらなる成長を目指していきたいと思います。